この記事は前記事の技術編です、合わせご覧ください。
93%の「不都合な真実」
前回の記事で、コミュニケーションの本質は「情報伝達」ではなく「関係構築」や「感情表現」にあるとお伝えしました。 では、明日から具体的に何をすればいいのでしょうか?
多くのリーダーはここで「話し方」や「語彙力」を鍛えようとします。しかし、それは間違いです。 心理学には「メラビアンの法則」という有名な実験結果があります。人の印象を決める要素のうち、「言語情報(話の内容)」はわずか7%に過ぎないのです。
残りの93%は、「聴覚情報(声のトーン)」と「視覚情報(見た目・表情)」です。つまり、あなたが「何を言うか」を考えている間に、相手はあなたの「気配」からすべてを読み取っています。
今回は、この93%の「見えない気配」を支配し、相手との信頼を強固にする3つの技術をお伝えします。

技術1:非言語コミュニケーション(Non-verbal)
~「敵ではない」という安全信号~
相手があなたに本音(感情や思考の整理)を話さないのは、あなたが怖いからではありません。「安全だ」という信号が出ていないからです。
リーダーが意識すべき非言語スキルは、笑顔や身振り手振りよりも、もっと根源的な「へその向き」です。
- へその法則(Navel Rule): 人は興味のある対象に「へそ」を向けます。相手が話しかけてきた時、PC画面を見たまま首だけ回していませんか? たとえ30秒でも、椅子を回転させ、相手にへそ(急所)を正対させること。 これは生物学的に「私はあなたを攻撃しないし、あなたを受け入れている」という最強の安全信号(Open Posture)になります。
- 眉のフラッシュ(Eyebrow Flash): 人と目が合った瞬間、0.5秒だけ眉を上げる動作です。これは世界共通の「親愛のサイン」です。 挨拶をする時、無表情で「おはよう」と言うのではなく、眉を一瞬上げるだけで、相手の脳は「歓迎されている」と認識します。
技術2:ストローク(Strokes)
~心の酸素を供給する~
交流分析(心理学)では、人の存在を認める働きかけを「ストローク」と呼びます。 人はストロークが不足すると、心の栄養失調に陥り、意欲を失います。
リーダーが使い分けるべきは、2種類のストロークです。
- 条件付きストローク(DOへの承認): 「売上達成おめでとう」「資料が見やすいね」。 これは「行為・成果」への評価です。ビジネスでは多用されますが、これだけだと相手は「成果を出さない自分には価値がない」と不安になります。
- 無条件ストローク(BEへの承認): 「おはよう」「元気?」「いてくれて助かるよ」。 これは「存在そのもの」への承認です。
実践テクニック: 会議の冒頭や朝の挨拶で、必ず「無条件ストローク」から入ってください。 「成果(DO)」の話はその後です。存在(BE)が満たされて初めて、人は成果に向けて走ることができます。
技術3:グルーミング(Grooming)
~無駄話という名のメンテナンス~
猿の毛づくろい(グルーミング)には、汚れを取るという機能以上に、「群れの仲間を確認し合う」という重要な役割があります。 人間にとってのグルーミング、それが「中身のない雑談」です。
「今日は暑いね」「最近どう?」 この会話に情報的価値(Information)はゼロです。しかし、関係構築(Phatic Communion)としての価値は100点です。
これを言語学では「交感的交わり」と呼びます。ラジオのチューニングを合わせるように、お互いの周波数を合わせる行為です。
実践テクニック: 効率主義のリーダーほど、雑談を「時間の無駄」と切り捨てがちです。 しかし、これからは「雑談=Wi-Fiの接続テスト」と考えてください。 接続テストなしに、大容量のデータ(重要な指示)を送ろうとしてはいけません。 「天気がいいね」は「通信状態は良好ですか?」という確認プロトコルなのです。
結論:技術で「器」は作れる
- 非言語で安全地帯を作り、
- ストロークで心の酸素を送り、
- グルーミングで回線を繋ぐ。
これら3つに、高度な論理的思考や語彙力は必要ありません。必要なのは「やるか、やらないか」の意思だけです。
「口下手だからリーダーに向いていない」と悩む必要はありません。 言葉以外の93%を磨くことで、あなたは誰よりも信頼される「聞き手(器)」になることができるのです。
明日から変わる! リーダーのための「10秒アクション」リスト
理屈はわかりましたね。でも、「急にキャラを変えるのは恥ずかしい」「忙しくて余裕がない」という方もいるでしょう。 そこで、1回10秒以内で終わる、誰でも今日からできる3つの「マイクロ・アクション」を用意しました。
まずは明日、これだけ試してみてください。騙されたと思ってやってみるだけで、オフィスの空気が変わります。
1. 朝の「眉上げ(アイブロウ・フラッシュ)」
- Action: 明日オフィスに入って誰かと目が合ったら、言葉を発する前に0.5秒だけ眉をクイッと上げてください。
- Effect: それだけで「敵意はない、歓迎している」という信号が伝わります。もし挨拶の声が出なくても、マスクをしていても、これだけで「感じの良い人」になれます。
2. 椅子ごと振り返る「へそ回し」
- Action: 相手が「ちょっといいですか」とデスクに来たら、首だけ回すのをやめましょう。足を使って椅子ごと回転し、へそを相手に向けてください。
- Effect: 時間にしてわずか2秒。たとえ忙しくて「今は無理」と断る場合でも、体ごと向いて断れば、相手は「拒絶された」とは感じません。
3. 帰り際の「+1行」ストローク
- Action: 業務連絡のメールやチャットの最後に、あるいは退勤時の「お疲れ様」の後に、業務と関係ない一言(グルーミング)を添えてください。
- Before: 「資料修正ありがとう。(業務完了)」
- After: 「資料修正ありがとう。今日は寒かったから暖かくしてね。(気遣い)」
- Effect: このたった1行の無駄が、無機質な「情報伝達」を、温かい「人間関係」に変える接着剤になります。
コミュニケーションの達人とは、難しいスピーチをする人ではありません。 こうした「10秒の微調整」を、積み重ねている人なのです。 さあ、まずは次の会話で、椅子を回すところから始めてみましょう!
図解資料:https://bestmax.com/slide/communication_techniques_Info.html
ではでは、Enjoy your life.
